鮭の粕汁

粕汁といえば、真冬の定番。最近では酒粕は年中手に入るようになりましたが、もともとは日本酒の寒仕込みの12月から3月頃までの間にしか取れないものです。 日本酒の醸造の際に出てくるこの酒粕。これを使った粕汁は2月頃の最も寒い時期に体を芯から温める季節の料理なのです。 粕汁の具材は地域によって様々ですが、今回は鮭のアラを使って濃厚な汁に仕立てます。 <使用食材> 鮭のアラ 大根 人参 ごぼう 酒粕 昆布 一番出汁 塩 薄口醤油 <下準備> ・酒粕をたっぷりの昆布出汁に数時間つけておく。 ・大根、人参はさいの目切りにして一番出汁で茹でておく。 ・ごぼうはささがきにして水にさらしておく。 <本調理> 1.鍋に昆布と鮭のアラを入れ中火にかけて出汁をとる。丁寧にアクを取る。 2.酒粕はすり鉢に移し、昆布出汁を徐々にくわえながら擂って伸ばしていく。 3.残りの昆布出汁を鍋に入れ、酒粕を粗めのザルで漉す。鮭の出汁も同じ鍋に注ぐ。 4.大根、人参、鮭のアラ、ごぼうを加えて煮立たせる。塩と薄口醤油で調味したら出来上がり。 <一言メモ> ・酒粕を漉すザルは粗い物でなくてはならない。味噌漉しは細かすぎる。 ・酒粕にアルコールが足りない場合は清酒をたす。 ・酒粕は精米歩合が高いものほど美味しい。

真羽太と蕪のすり流し

真羽太(マハタ)の旬は春から夏にかけてです。垢穢(クエ)と並ぶ高級魚として知られています。非常に上品な旨味と甘味のある美味な白身の魚です。身はもちろんの事、アラからは絶品の出汁、皮目にはゼラチン質、内臓すらも美味しく捨てるところのないと言われる魚です。 今回は、蕪をすり流しにして出汁を存分に味わえるように仕立てます。 <使用食材> マハタ 蕪 白ねぎ 昆布 薄口醤油 <下準備> ・マハタは三枚におろして、切り身とアラに分けておく。 ・アラは流水でしっかり洗い、血合いを除く。 ・鍋に水を注ぎ昆布を浸しておく。 ・蕪は皮をむいて小さめの乱切りにしておく。 <本調理> 1.昆布を入れた鍋にマハタのアラを加えコトコトと出汁を煮出す。アクをとりつつ、火加減を調整して出汁を濁らせないようにする。 2.出汁を濾して再び鍋に戻し、煮たたせた上でマハタの切り身を入れて火を通す。火が通ったら、一旦取り出しておく。 3.出汁を適量取り置いて、残りの出汁で蕪を柔らかくなるまで煮込む。水分を少し残す程度に煮詰めたら火からおろして粗熱を取る。 4.粗熱をとった蕪をミキサーにかけてピュレ状にする。先ほど取り置いておいた出汁で適度な濃度になるようピュレを伸ばし、塩で調味する。 5.お椀にマハタを入れ、蕪のすり流しを注いだら白ねぎを乗せ、薄口醤油を数滴たらせば完成。 <一言メモ> ・白ねぎはなくても良いかもしれない…。 ・マハタの出汁を殺さないよう注意。調味料は控えめに。 ・蕪もしっかりと出汁が出るのでうまいこと調和させる必要有り。

飛魚とそうめん南瓜の清汁仕立て

飛魚の旬は初夏から初秋にかけて、一方でそうめん南瓜は少し遅れた7月頃から出回り始めます。 飛魚は羽のように大きな胸ビレを持ち、その名の通り”飛ぶ”ように泳ぐユニークな魚です。味がしっかりしていて、その出汁は”アゴ出汁”として知られています。 一方でそうめん南瓜というのは別名金糸南瓜とも呼ばれ、湯がくと果肉がそうめん状にほぐれるこちらもまたユニークな食材です。 今回は飛魚のお出汁を活かして、清汁に仕立てます。 <使用食材> 飛魚 そうめん南瓜 すだち 昆布 塩 薄口醤油 <下準備> ・そうめん南瓜は輪切りにして、種とワタを取る。15分~湯がいて、茹で上がったら、冷水にさらして果肉をほぐす。 ・鍋に水を注ぎ、昆布を入れておく。 ・飛魚は三枚にさばく。アラは流水にさらし血抜きする。 <本調理> 1.水と昆布の入った鍋に、綺麗にした飛魚のアラを加えて火にかける。適宜アクを取り、出汁が濁らないように火加減に気をつけてクツクツと煮出していく。 2.飛魚の身は切り身にして、皮目に切り目を入れてからバーナーで炙り、塩と薄口醤油で調味して煮立たせた出汁に入れて火を通す。 3.お椀に切り身を入れ、出汁を注ぐ。飛魚の上にそうめん南瓜を盛り、すだちを1/4欠片添えれば出来上がり。 <一言メモ> ・切り身しか手に入らなければ、顆粒のアゴだしで代用。 ・飛魚の出汁の濃さとすだちの酸味がとても相性が良い。 ・そうめん南瓜は南瓜というより、瓜の特性が強い。さっぱり。

炙り塩鯖と大根の清汁仕立て

鯖の旬は10月頃から12月頃にかけて。特に京都の塩鯖は昔から美味しいと言われており、今でも京都の人々の生活に親しんだ食材のひとつです。鯖寿司の専門店が多く居を構えていたり、生鮮食品店でも様々な業者の塩鯖(“きずし(〆鯖)”ではなく!)が置かれていたりします。 京都で暮らす上で、鯖は切っても切り離せない食材のひとつ。ちなみに京都での塩鯖の相場はだいたい一尾1000円ちょっと。それ以下の安価なものも見かけますが、あまり美味しいとは言い辛いものが多くあります。 塩鯖は部位ごとに、造り、きずし、塩焼きなど、多様な料理に使うことができます。今回は鯖と相性の良い、同じく冬の味覚の大根を使って清汁に仕立てます。 <使用食材> 鯖(塩鯖)骨つき 大根 昆布 清酒 薄口醤油 山椒 <下準備> ・生の鯖を使う場合は、前日に背から開いて塩をし、冷蔵庫で寝かしておく。 ・塩鯖を三枚におろし、アラの部分は出汁をとる用にバラす。鯖の身は浮身用の2切れほどだけ切り出し、残りは他の料理用に保存。 ・大根は皮をむいて、厚め(5mm~1cm程)のいちょう切りにする。 <本調理> 1.鍋にたっぷりの水を入れ、昆布と大根、鯖のアラ、清酒をくわえて日にかける。丁寧にアクを取る。 2.大根が柔らかくなくなるまで煮込んだら、薄口醤油で調味する。 3.浮身用の鯖の切り身は酒蒸ししたのち、水気を拭いて皮目をバーナーで炙り焼目をつける。 4.お椀に盛り付け、山椒を挽きかけたら完成。好みで白髪ねぎをのせるのも良い。 <一言メモ> ・塩鯖に十分な塩分があるので、味付けは薄口醤油のみで十分。 ・浮身用の鯖は直接焼いてもいいが、脂がきつい可能性がある。 ・鯖の脂肪で大根が柔らかくなり、大根のジアスターゼで鯖の臭みがとれる。

渡蟹と冬瓜のお味噌汁

渡蟹の旬は雌雄で異なります。今回使うのは7月頃から秋にかけてが旬な雄の渡蟹。雄の渡蟹は味噌や卵はありませんが、雌に比べて身がしまり、かつ甘みが強いのが特徴です。 甲殻類特有の濃い出汁が根菜類と相性が良いので、今回は同じく旬の冬瓜と合わせてしっかりと旨味を吸わせます。 <使用食材> 渡蟹(雄) 冬瓜 昆布 赤味噌 白味噌 <下準備> ・渡蟹はふんどしを剥がしてから甲羅を外し半分に割る。この時、”砂袋”と”がに”をきちんと外しておく。 ・昆布は水につけ昆布出汁を水出ししておく。 ・冬瓜は種を除き、皮を剥いたのちに一口大に切り、串が通るまで茹でておく。 <本調理> 1.蟹は脚を胴体から外し、胴体も幾つかにばらして、昆布出汁を加え鍋でことことと煮込む。昆布はいれたままで良い。 3.蟹からでるアクを丁寧に取り除いたら、別鍋に冬瓜とこの出汁を注ぎ水分がなくなるまで炊き上げる。 2.赤味噌に少量の白味噌を加え、出汁を少量ずつ入れながらすり鉢でしっかりと擂る。 3.十分に擂った味噌を味噌漉しで漉し、1の出汁を味噌汁に仕立てる。 4.お椀に冬瓜と蟹の脚、および蟹の身をほぐしたものを盛って、味噌汁を注げば完成。 <一言メモ> ・蟹の甘みを引き立てるため、赤味噌に少量の白味噌を加えて調味する。 ・必ず味噌は擂って、濾す。美味しい味噌汁を作るには、これ必須。

枝豆のすり流し

枝豆の旬は夏。冷凍食品などのお陰で、家庭でも居酒屋などでも一年中食べることのできる食材という印象ですが、実際の旬は夏になります。夏になれば、青果食品店の店頭には、一般的な枝豆から茶豆まで産地も様々に多様な品種の枝豆が並びます。いろいろ買って塩茹でして味比べをするのも一興。 しかし、枝豆の美味しい食べ方は塩茹でだけではありません。 今回は地元京都のブランド産品”紫ずきん”を、その特徴であるしっかりとした甘みと、枝豆特有の清涼感のある色合いを前面に出した”すり流し”に仕立てます。 <使用食材> 枝豆 一番出汁(昆布だし) 塩 <下準備> ・枝豆は水で洗ってから塩揉みし、両端をはさみで切ってから沸騰したお湯で茹でる。茹で上がった枝豆は流水にさらして冷やし、豆を取り出して薄皮まで剥いておく。 ・一番出汁の取り方を参考に、鰹節を控えめにして一番出汁を取り、十分に冷ましておく。 <本調理> ・枝豆を飾り用の数個を取り分け、残りをすり鉢あるいはミキサーを使って、一番出汁を徐々に加えながらピュレ状にする。 ・ピュレ状になった枝豆を出汁で好みの濃度までのばし、塩少々(このみで薄口醤油をいれても良い)で調味する。 ・器に注ぎ、最後に飾り用に取り置いていた枝豆を散らせば出来上がり。 <一言メモ> ・豆の味がしっかりしているので、一番出汁の鰹は控えめに。 ・一番出汁の代わりに昆布出汁であっさり仕上げても良い。 ・出汁でピュレを伸ばす際にもミキサーを使うとふんわりとした口当たりに仕上がる。

鱸と茸の清汁仕立て

鱸は鰤同様の出世魚として知られています。ヒカリゴ、コッパ、セイゴ、フッコ、ハネと成長し、4年以上で60cm以上のものを鱸(スズキ)と呼びます。鱸は年中通して水揚げがありますが、旬は初夏から晩夏にかけてになります。 今回は晩夏の鱸に、秋の先駆けのしいたけとまいたけを合わせて清汁仕立てに。 <使用食材> 鱸(スズキ) しいたけ まいたけ 実山椒 昆布 塩 薄口醤油 <下準備> ・鱸は三枚におろし、切り身にする。使用するのは切り身一つとアラだけなので、他の切り身は別の料理に。アラは流水にさらし、しっかり血を抜いておく。 ・沸騰したお湯をアラにかけて霜降りをし、汚れと臭みを除く。 ・鍋に水を入れ昆布をつけて、水出しの昆布出汁を準備しておく。 ・しいたけはスライスにし、まいたけは適当な大きさにちぎっておく。 <本調理> 1.水出しした昆布出汁を昆布を入れたまま火にかける。沸騰したら昆布を取り出し、鱸のアラを中火~弱火で加え煮出す。アクが出てきたら適宜丁寧に取る。 2.鱸の切り身の皮面に切り目をつけてから、塩を振ってバーナーで軽く炙る。蒸し器に少量の出汁と酒とともに入れて蒸し上げる。 3.鍋に濾した出汁を注ぎ、しいたけとまいたけを加えて火が通るまで弱火~中火にかける。 4.火を止める前に実山椒を加えて、短時間煮たら塩と薄口醤油で調味して火から下ろす。 5.お椀に鱸、まいたけ、しいたけを盛りつけ、出汁を注ぐ。最後に実山椒を飾り付けたら出来上がり。 <一言メモ> ・出汁を濁らせないように、対流を起こさない程度の火加減を心がける。 ・鱸は身が崩れないように気をつける。

とうもろこしのすり流し

とうもろこしの旬は6月~9月。 今回は夏の暑いさなかにも食べられる冷たいすり流しに仕上げます。 とうもろこしの優しい甘さが、口に広がる一品。素材そのままを味わうすり流し本来の良さが引き立ちます。 <使用食材> とうもろこし(生,芯付き) 塩 薄口醤油 <下準備> ・とうもろこしは芯に沿って実を板状に削ぎ切る。実の一粒一粒がばらけないように気をつける。 ・芯を縦に四つ割、横には三つ割ほどに切り分ける。鍋に水を入れとうもろこしの芯を加えて、コトコトと煮込んで出汁をとる。冷やしておく。 <本調理> 1.鍋にとうもろこしの実を加えて、ひたひたになる程度に水を注ぎ中火にかける。 2.とうもろこしに火が通って十分に甘みが出たら、火からおろして粗熱を取る。一枚(一塊?)は飾り用に取り置いておく。 3.すり鉢あるいはミキサーにかけてピュレ状にしてから裏ごしする。 4.裏ごししたとうもろこしを、下準備の段階でとうもろこしの芯から取っておいた出汁を使って好みの濃度になるまでのばす。 5.塩少々と薄口醤油少々加えて調味すれば出来上がり。飾り用のとうもろこしを最後に乗せる。 <一言メモ> ・とうもろこしの芯は甘みのある出汁が取れる。 ・できる限り、他の食材を入れず純度高く作ると良い。 ・ミキサーにかけるのは粗熱をしっかりと取ってから。

牡蠣のみぞれ汁

牡蠣の旬は夏と冬の年に2回。これは牡蠣が真牡蠣と岩牡蠣という2種類いるからでして、いわゆる牡蠣の旬であると言われる”Rのつく月”というのは真牡蠣の方の旬です。この時期は産卵を控え牡蠣が栄養を蓄えるので、非常にふっくらとして美味しい季節なのです。 今回は、そんな牡蠣と相性の良い大根と防風を使ってみぞれ汁に仕立てました。 真牡蠣 大根 防風 昆布 塩 薄口醤油 <下処理> ・牡蠣は片栗粉で下処理しておく。(詳しくはこちら牡蠣の下処理) ・ボウルに水をため、昆布を浸して昆布出汁を準備しておく。 <本調理> 1.昆布出汁を火にかけ、塩と薄口醤油で味をつける。 2.大根はおろし金で好みの粗さにおろし、出汁に加えて弱火で半透明になるまで火を通していく。 3.鍋にお湯を沸かし、沸騰したら牡蠣を一つずつ加え縮む直前であげる。 4.お椀に牡蠣を盛って、その上から大根おろし入りの出汁を注ぎ、さらに防風を飾りつければ完成。 <一言メモ> 牡蠣は火を通しすぎないように気をつける。茹でた後は長時間放置しているとエキスが外に出てしまうので注意。 好みでお酢か柑橘類の絞り汁を加えるのも良い。